LAYER 1

感覚に触れる

第1層では、理論を覚える前に、
まず「何かが変わる」入口に触れていきます。

はじめに

少し考えてみてください。

視覚がない人に、空を教えるにはどうしたらいいでしょうか。

・上にあって、青く広がっている
・清々しい気持ちになる
・地面から○km先の空間
・宇宙と地球の間

どれも正しい説明です。
しかし、どれも「空そのもの」ではありません。

どれも正しいのだけど、どれも正しくない。

これは、特別な話ではありません。
同じことが、日常のトレーニングやスポーツの中でも起きています。

例えば、「150キロ投げるにはどうしたらいいか」

・股関節をこう使う
・この筋肉を使う
・集中して爆発するように動く

これらはすべて、生理学やバイオメカニクスなどの観点から見れば正しい説明です。
ですが、それだけでは「150キロを投げれること」にはなりません。

正しいけれど、正解ではない。

実際、150キロを投げる人は「投げれるから投げている」

プロアスリートや武術の達人の言葉を聞くと、多くが「感覚」の話になります。
そして彼らにとっては、それが嘘でも比喩でもなく、事実です。

むしろ「股関節を」「筋肉を」と意識した瞬間に、動きが崩れることもある。

また、よく言われるように「わかるとできるは違う」という言葉もあります。

では、空を教えるにはどうすればいいのか。
答えはシンプルです。

視覚を与えること。

そしてもし「視覚 → X」と置き換えるなら、Xを与えることです。

このコンテンツでは、そのXを「感覚」として扱います。

何が良くて、何が悪いのか。
何が通っていて、何が崩れているのか。

それを評価できる軸があると、成長は加速します。

この第1層では、
理論と実践を通して感覚に触れること / 感覚の扉を開くことを目的としています。

1. なぜ努力しても伸びないのか

練習している。
トレーニングもしている。
時間もかけている。

それでも、思ったように伸びない。

上手い人と同じことをしているはずなのに、
なぜか差が埋まらない。

この感覚に、心当たりはないでしょうか。

僕自身、ずっとここで止まっていました。

少しだけ、やってみてください。

その場でいいので、腕立て伏せの姿勢をとってみてください。

そして、
ゆっくり身体を支えてみてください。

このとき
・安定している感覚がありますか?
・どこかに力が集まっている感覚がありますか?

もう一度やってみてください。

今度は、
できるだけ「頑張って支えよう」としてみてください。

どうでしょうか。

さっきよりも、
・どこかが苦しくなったり
・不安定になったり

しませんか?

多くの場合、

頑張るほど、崩れます。

逆に、
頑張っていないのに、安定することがあります。

ここで、少し違和感が出てきます。

「努力している方が良くなるはずなのに、なぜ崩れるのか?」

ここで起きているのは、
「正しいかどうかが分からないまま動いている」という状態です。

・上手くいっているのか分からない
・崩れているのに気づけない
・修正の基準がない

だから、
繰り返しても、積み上がらない。

ここで一つだけ言葉を置きます。

成長とは、「ズレを修正できること」です。

努力しても伸びないとき、
努力が足りないのではなく、

ズレたまま繰り返している。

ここで一つ、自分に問いを置いてみてください。

・上手くいった理由を説明できますか?
・崩れた理由を説明できますか?

もし難しい場合、

まだ「見えていない」だけです。

よく言われるように、
「正しい動き」を探したくなります。

ですが、

「正しい動き」は存在しません。

あるのは、
「その関係の中で通る動き」だけです。

では、その「ズレ」とは何なのか。

力はどこに行っているのか?

次は、
「力が逃げるとは何か」に触れていきます。

2. 力が逃げるとは何か

では、
「ズレている」とは何なのか
これをもう少し触れてみます。

先ほどの腕立ての姿勢を、もう一度とってみてください。

今度は少しだけ意識を変えます。

「身体を支える」のではなく、
「どこに力が返っているか」を感じてみてください。

どうでしょうか。

・手に集まっている感じがあるか
・肩に乗ってくる感じがあるか
・足や地面に落ちていく感じがあるか

少し曖昧でも大丈夫です。

腕立ての姿勢で押しているとき、
実際には押した分だけ、何かが自分に返ってきています。

これを反作用と呼びます。

そして重要なのは、
どこに返っているかです。

例えば、

押した力が
肩、腕、上半身

に集まってくると、

・苦しくなる
・バランスが崩れる
・長く支えられない

これが「力が逃げている状態」です。

逆に、

押した力が
足や地面

に落ちていくと、

・安定する
・楽になる
・同じ姿勢を保てる

これが「力が通っている状態」です。

ここで整理すると、

力が弱いのではなく、「返る場所が違う」

先ほど、
頑張るほど崩れた理由もここにあります。

頑張るほど、上に返していた。

つまり、

「押す」とは
相手に力を加えることではなく、
どこに返すかを決めること

もう一度だけ確認してみてください。

腕立ての姿勢で、
力がどこにあるか?

・肩にあるか
・手にあるか
・足にあるか
・地面に落ちているか

これが見えてくると、
「良い・悪い」の基準が生まれます。

ここで出てくるのは、

強く押すほど強いわけではない。
通るときは、軽くても通る。

これは自分の中だけの話ではありません。

自分・相手・地面
この関係の中で、力は流れています。

では、
なぜ同じように見える動きでも結果が変わるのか。

次は「上手い人と何が違うのか」に触れていきます。

3. 上手い人と何が違うのか

では、
なぜ同じように見える動きでも、結果が変わるのか
ここに触れていきます。

これまでの話で、
・努力しても伸びない理由
・力が逃げるとは何か
に触れてきました。

では、
上手い人は何が違うのでしょうか。

多くの場合、こう考えます。

・フォームが綺麗
・筋力が強い
・柔軟性がある

確かに、それも一つの要素です。

ですが、
それだけでは説明できません。

なぜなら、
同じフォームでも、結果が違うからです。

少しやってみてください。

立った状態で、
軽く前に手を出してみてください。

そして、
誰かを押すイメージをしてみます。

まずは、
腕で押してみてください。

次に、
全身で押すイメージを持ってみてください。

どうでしょうか。

見た目は大きく変わらないかもしれません。

ですが、
中の感覚は変わっているはずです。

この違いは、
筋肉の使い方の違いではありません。

関係の作り方の違いです。

上手い人は、
自分の中だけで動いていません。

・地面との関係
・相手との関係
・空間との関係

これらを含めて動いています。

一方で、
上手くいかないときは

「自分だけ」で何とかしようとしている

すると、

・力は局所に集まる
・反作用が上に返る
・崩れる

ここで整理すると、

違いはフォームではない
どこと繋がっているか

だから、
同じ動きをしていても

・通る人
・通らない人

が生まれます。

ここで一度、自分に問いを置いてみてください。

動くとき、
・自分の身体だけを感じているか
・外(地面・相手)も含めているか

どちらになっているでしょうか。

上手い人は、
特別な動きをしているのではなく

関係の中で動いている

ここで出てくるのが、

「正しい動きは存在しない」

という考え方です。

あるのは、
「その関係で通る動き」だけ

では、
なぜ力を入れると崩れてしまうのか。

次は、
「脱力とは何か」に触れていきます。

4. 脱力とは何か

では最後に、
「脱力とは何か」
ここに触れていきます。

ここまでで、
・努力しても伸びない理由
・力が逃げるとは何か
・上手い人との違い

を見てきました。

その中で、よく出てくる言葉があります。

「力を抜け」

ですが、この言葉はかなり誤解されやすいです。

・力を抜く
・リラックスする
・ダラっとする

こういうイメージになりがちです。

少しやってみてください。

その場で立ったまま、
できるだけ力を抜いてみてください。

どうでしょうか。

弱くなりませんか?

では次に、

軽く立ったまま、
足の裏だけ感じてみてください。

どうでしょうか。

さっきより安定しませんか?

ここで分かるのは、

脱力 = 力を抜くことではない

ここで一つ、定義を置きます。

脱力とは、
不要な力を使わず、必要なところに通っている状態

なぜ力むと崩れるのか。

力むと、
局所に力が集まります。

すると、

・反作用が上に返る
・バランスが崩れる
・動きが止まる

一方で、脱力しているときは、

力が分散し、流れています。

だから、

・崩れない
・動き続けられる
・結果として強い

ここで整理すると、

力む = 強い ではない
通る = 強い

もう一度、自分に問いを置いてみてください。

動くとき、
・どこかに力が固まっていないか
・全体として繋がっているか

これが見えてくると、
脱力の感覚は少し変わります。

脱力とは、
「何もしない」ことではなく

「余計なことをしない」こと

ここまでくると、

力を出そうとするほど崩れ、
力を通そうとすると安定する

そんな感覚が、少し出てきます。

最後に

ここまでの内容は、
トレーナーとして様々な知識や経験を得た僕が、
あの頃のがむしゃらな自分に伝えたかったことです。

だから、ここまで触れたあなたは、
あの頃の僕より少しだけ“見えている”状態にあります。

ここで大事なのは、

理解したかどうかではなく、何かが変わったかどうか

・少し違和感がある
・なんとなく気づきがある
・うまく言葉にできない

そう感じているなら、
それは正常です。

第1層では、
理解する前に、まず感覚に触れることを目的としてきました。

ここから先は、

「評価できるようになる」段階に入ります。

何が良くて、何がズレているのか。
それを見分けるための軸を、少しずつ手にしていきます。

強くなるということは、
特別な何かを手に入れることではなく、

見えなかったものが見えるようになり、
修正できるようになること

その積み重ねの先にあります。

ここまで触れた内容を、
ぜひ一度、自分の身体で試してみてください。

そして、
「何かが変わる感覚」
それを大切にしてほしいと思っています。

次は、
第2層|評価できるようになる
に進みます。